こんにちは。キャリアコンサルタント・社会保険労務士の村井です。
コロナ禍において、テレワークをはじめとする様々な働き方が変わりました。テレワークやリモートワーク、分散出勤、時差出勤などの働き方も定着してきましたし、席を対面ではなく互い違いに空席にしてソーシャルディスタンスを確保したりするようなことは都市部だけでなくここ東三河地域でも一般的に行われています。
このように当たり前だと思っていた働き方が変わってきたときこそ、「自分らしく働く」「自分が快適と思える環境で働く」ことについて、ぜひ一度考えてみて頂きたいと思います。
目次
そもそも、「自分」を知るにはどうしたらいいの?
自分というのは、意外と自分ではわからないもの。
「私ってこんな人」というイメージは、もともとの自分の思考の癖や価値観はもとより、家庭などを含めた周囲の環境によっても形成されます。「あなたってこういう人だよね」と誰かに評価されることによって、「私は責任感が強いんだな」「俺は明るいんだな」と自分の輪郭を肉付けしているのです。社会人になったとき、「もう大人なのだからしっかりしなければ」と自分に言い聞かせた経験のある方も多いのではないでしょうか。
このように形成された自分のイメージ(セルフイメージ)の一種に、「ペルソナ」という概念があります。これは心理学者のユングが提唱した概念で、地位や役割、場面などに対応したふるまいをすること、「まわりの人に対応した自分」のことを指しています。
ペルソナは、いわば「社会人」「大人」「元気な人」「しっかり者」といった仮面であり、私たちは普段TPOに合わせてこの仮面を掛けかえながら生活しているのです。
仕事をしているときは「協調性がある」人でも、家に帰れば「マイペース」であったり、友人の前では「陽気で細かいことを気にしない」性格と思われていても、恋人の前では「ナイーブで傷つきやすい」という人もいます。これは、ペルソナという仮面を場や相手に合わせて掛けかえているからこそ起こる状態です。
「仕事ができると思われたいから、きちんとしたスーツを着よう」「明るい人と思われたいから、大きな声であいさつをしよう」というように、理想に合わせた形で自分のペルソナを補強している方も多いのではないでしょうか。
ですが、それは「自分」の本質的な価値観や考え方ではないこともあるのです。
人の中で働くことが苦痛な人もいますし、逆に一人で静かな環境ではまったく仕事にならない人もいます。みんなでわいわい仕事をしたいタイプの人もいれば、専門的な内容を一人でコツコツ積み上げるのが得意なタイプの人もいます。
この違いは、その人の固有のものの見方や感じ方によります。
ところが、先にあげたような「私ってこんな人」というセルフイメージがペルソナによって作られていることを自覚していない場合、本当は自分がどのような価値観や考えを持っているのかが曖昧になってしまうことがあるのです。そして、自分が本来好きではない環境や快適ではない状態に陥ったときに対応を誤り、さらに状況を悪化させてしまうこともあります。例えば自分が本当はやりたくない仕事をするとき、無理を重ねることで精神的な病気を発症してしまうこともあるのです。
ですから、「自分はこういう考え方をしている」「自分はこれが一番大事」といった「自分」のものの見方や本質的な価値観を知って意識することは大切です。どのような環境・働き方が自分らしいのか。どのような場であれば自分の能力や強みを生かして働けるのかを、ぜひ定期的に見つめなおす時間を作っていただければと思います。
自分を知るために有効な2つの方法
ここでは、「自分」の固有の価値観や強み、ものの見方などを知るために有効な方法をお伝えします。
① 性格検査を受けてみる
就職試験などでもおなじみのYG性格検査、TEG(東大式エゴグラム)などをはじめとして、受験者のパーソナリティを診断するものです。MBTI(マイヤーズ・ブリックスタイプ指標)、エニアグラムなどのアセスメントツールもこのカテゴリーに含まれます。
代表的な性格検査 | |
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YG性格検査 | 「情緒特性」「人間関係特性」「行動特性」「知覚特性」の4つの特性について、 受検者の特徴を判断するもの。 |
TEG | エゴグラムの考え方から、東京大学医学部心療内科TEG研究会が日本人の性格傾向や ものの考え方に合わせて開発した心理検査。 |
MBTI | 性格を心の機能と態度の側面から4指標・16タイプに分類するもの。 必ず専門家からタイプごとのフィードバックを受けるという特徴がある。 |
エニアグラム | 質問に対する回答から「改革する人」「人を助ける人」「達成する人」など 9つの性格タイプに大別するもの。 |
TG性格検査 https://sinri.co.jp/yg
TEG http://www.saccess55.co.jp/teg3.html
エニアグラム https://www.enneagram.ne.jp/about/diagnosis/dns01
こうした性格検査は、一般的に企業と受験者の性格におけるマッチングを図るために行われる機会が多いため、就職試験とセットで記憶されている方も多いでしょう。ある特性を備えた社員が多い企業であれば、そのような特性を持った人を採用したほうが定着率が高くなるというような傾向があるため、多くの企業で就職試験に導入されています。
しかし、これらの性格検査は自分を知るという観点からも有効なツールになりますので、就職活動の時期だけでなくとも、ぜひ一度は時間を設けて自己受験してみることをお勧めします。
受験方法は個別に申し込みができるもののほか、団体受験や医療機関での受験しか受け付けていないものもあり、多くは有料の検査になります。簡易的なものは求人サイトや就活生向けのサイトでも無料で公開されていますので、ご興味を持たれた方はまずそちらから受験してみることをお勧めします。
② 自分の強みと弱みを知る
自己分析を通して自分の強みや弱み、どんなときに充実感を感じてどんなときに挫折感を感じるのかを知ることにより、自分の特性を把握して活用することができます。
紙に自分が過去どのようなときに嬉しいと感じたかというようなエピソードや挫折をした経験、それを克服した事実などがあればどんどん書き連ねていき、自分の価値感や特性を発見していきましょう。自分で分析するのが難しければ、「ストレングス・ファインダー」(クリフトンストレングス)のようなアセスメントツールを使うことも有効です。
ストレングス・ファインダー(クリフトンストレングス) https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja/253634/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0.aspx
このようにして自分の強みや得意分野を知ることで、その特性を積極的に伸ばせたり活かせたりする仕事を選びやすくなります。就職や転職だけでなく、現在の職場でも自分の得意な仕事を率先して引き受けたり、苦手な分野の仕事は誰かにサポートを頼むように働きかけるなどすれば、結果的に働きやすい環境を作りやすくなります。
自分を知って、自分らしく働くことのメリットを実感しよう
社会に出れば、自分が思う「社会人らしさ」というペルソナを被る場面が増えてきます。
それはそれで社会生活においては大事なことですが、それを自覚しているかどうか、またペルソナのない本来の自分の価値観や感覚に合っているかを定期的に確認し、リセットする習慣をぜひつけていただければと思います。そうすることにより、自分がより快適に安全に働くことができるよう、職場などの周囲の環境に働きかけることができるようになるのです。
コロナ禍において、仕事や職場における「当たり前」は大きく変わりました。当たり前が変わってきたこの時期にこそ、自分らしさを見つめなおす契機にしていただければと思います。