東三河には日本語を母語としない外国人が多く暮らしています。彼らと円滑なコミュニケーションをとろう!仲良くなろう!とした時に役に立つのが『やさしい日本語』です。
今回は外国人社員はここが困ってるという事例と、それを解決するやさしい日本語研修(企業向け)について『あきえ日本語教室』のあきえ先生から伺いました!
あきえ日本語教室 あきえ先生
日本語教師、入門・やさしい日本語(アスク出版) 認定講師
文化庁委託「就労者に教える日本語教師研修」修了
企業の担当者へのヒアリングを元に、現場の状況にあった『やさしい日本語』講座とワークショップ、異文化理解講座を提案しています。講座は対面かオンラインを選択できます。また、就労外国人向けの日本語研修にも対応します。
目次
外国人社員の困った!事例 2選
研修センターの交流会での事例
名古屋市にある某研修センターでは、一ヶ月研修の卒業式の際、配属先の企業との交流会が開かれます。ほとんどの実習生は企業の方と初対面です。
ある実習生は工場長から話しかけられましたが、何を言っているかわからずきょとんとしてしまいました。その実習生は研修センターではよく話せる方で、日本語講師とは普通に会話ができます。
実はこの工場長、バリバリの名古屋弁。さらに早口だったので実習生には聞き取りにくかったのです。
これに対し、外国人社員の受け入れに慣れている企業は言葉に注意しなくてはいけないということを重々承知しているため円滑なコミュニケーションが取れていました。
バングラデシュ出身・Aさんの事例
Aさんは昨年4月より浜松の部品メーカーの技術者として勤務しています。入社時は日本語能力は問われず、部署の上司も英語ができたため仕事に支障がありませんでした。
しかし配属が変わり、英語が全く話せない上司に。上司は難しい日本語で話してくるため意思の疎通ができなくなりました。人事部にその上司の日本語について相談したが、改善されず。
Aさんは週1回日本語のレッスンを受けていますが、それでもすぐの上達は望めません。日本人の同僚は簡単な日本語で話しかけてくれるため、何を言っているか分かるようになりました。Aさんはその上司もやさしい日本語で話してほしいと願っています。
外国人にも日本語の学習が必要ですが、お互いに歩み寄れば早くコミュニケーションが取れるようになります。
外国人社員が日本語を流暢に話せているとしても、仕事に関する文化や習慣は国によって異なります。
- 入社前にしっかりコミュニケーションを取って、会社について、仕事について話しましょう。また、その人の国の考えや働き方についても聞きましょう。
- 日本人にとっては当たり前になっていることでも外国人社員には分かっていないことが多い、ということを念頭に置いておきましょう。
- 柔軟な考えを持ちましょう。
- あいまいな言葉(大丈夫・わかりましたなど)は、使わないようにしましょう。
注意の仕方も国によって違います。異文化理解をするために働いている外国人の国の文化や習慣を聞いたり調べたり出来ると良いですね。
やさしい日本語研修(企業向け)ってなに?
やさしい日本語研修は日本人が対象です。
日本人社員がこの研修を受けるメリットとしては
- 外国人社員への指示が伝わりやすくなる
- 社員全体に言葉の負担が減り、安心して働ける職場ができる
などが挙げられます。
やさしい日本語研修の内容は?
担当者にヒアリング
どんなことで困っているか、外国人社員の国籍、人数、仕事内容などをヒアリングし、これからの課題などを明確にします。
研修スタート
1時間目/やさしい日本語の一般的な講座
まずはやさしい日本語とは何かを学ぶところからスタート。外国語の疑似体験として知らない外国語をみんなで聞いてみます。
それにより、言葉がわからずどうしたらいいか困ったり、焦ったりする外国人の気持ちが想像しやすくなるのです。それから、外国人は日本語の何がわからないか身近な例を挙げてお話しします。
次に現場に合わせた例文でやさしい日本語の作り方を学んで練習します。もちろん以前の記事でお伝えした『ハサミの法則』の使い方も伝授しますよ。
日本語 初中級者と文章でやり取りする際は主語を省略しないで書いた方が伝わりやすいです。
AI翻訳を利用する際も同様のことが言えます。
2時間目/実際に練習
やさしい日本語を実際に使ってみましょう。練習は外国人社員の方と一緒に行います。
実際に現場で使われる指示をやさしい日本語にして伝える練習。文章を外国人社員が分かるやさしい日本語にする練習。最後に、日常会話もしてみます。
研修後、日本人社員から「業務上だけでなく、会社内で今まで外国人社員にどのように話しかけたらいいかわからなかったのが、気軽に話しかけられるようになった。」外国人社員からも「日本人と話すのが怖くなくなった。」という声が聞けました。
掲示板や社内のおしらせのやさしい日本語化に取り組み始めた企業もあるようです。
また、あきえ先生は技能実習生向けに日本語研修もされています。日本語研修では、そこで働く日本人に実習生からのインタビューを受けてもらったり、実習生の研修での成果物(作文など)を食堂の掲示板に貼ったりします。
研修後には「インタビューを受けた人が実習生たちにわかる日本語で話すようになった。」「今まで話したことがなかった人が話しかけてくれるようになった。」という嬉しい変化がありました。
豊橋まちゼミで外国人の困った!を知ろう
(昨年2月の対面でのまちゼミの様子)
8月半ばから開催されている『第9回 豊橋まちゼミ』ではあきえ先生も講座を担当。
『外国人は日本のどんなことがわからないの?』ということで、日本在住の外国人が言葉や文化の違いから起こした失敗や疑問に思うことを教えてもらえます。やさしい日本語研修でいう1時間目の一部分ですね。あきえ先生の講座は8月24日からスタートです(全5回を予定)。