宙スタ4

株式会社サイエンス・クリエイトが運営する創業支援施設Startup Garage(スタートアップガレージ)でコミュニティマネージャーと、宙(そら)サポの担当をしている勝間です。
「うちの会社と宇宙ってどうやって接点を考えたらいいの?」という声に応える連載、 “宙スタ”シリーズ。

今回は愛知に限らず日本人の国民性とイノベーション、そしてそこに「宇宙」がどう介在するのかについて論じてみたいと思います。

日本のイノベーションにはサブテーマが必要

DXやXaaS戦略で各国に大きく引き離される要因ともなっていますが、ものづくり企業を多く有し、さまざまな製品の輸出により国を富ませてきた日本では伝統的にハードを中心とした改善型のイノベーションが得意なように感じられます。

「あるシチュエーションで発生するペインをコアコンピタンスで解決する事を想像し、それを製品(サービス)に繋げる」のは商品開発の骨子ですが、カイゼンがメインであると、特定のゲームの中での最適を目指してしまい、海外のプレイヤーが仕掛けるゲームチェンジに対応できないケースが多々発生しています。

白物家電、液晶技術など一定年齢以上の方は苦い思いをされた方も少なくないのではないでしょうか。

イノベーションに向けて産・官・学・金、様々な次元で取り組みが行われていますが、カイゼン型のイノベーションが得意な日本人にとって、未来で必要とされるコアテクノロジーをバックキャスティングで進化させるにあたってテーマの設定は不可避です。

一方で【農業の未来】や【自動車の未来】といったテーマ設定だと本体事業の現状や参加者のやりたいこと・結論に引きずられ、5ヵ年の中期計画の域を出ない検討となってしまい、破壊的・革新的イノベーションに繋がりにくいようです。

どのようにリアルな10年20年以上先の未来の世界を想像し、その世界で自社が何をしているか、何ができるのか想像する、そういった点において「宇宙」をテーマすることが日本人にとって実はめちゃくちゃ合理的だったりするのです。

アマゾン創業者の未来予想図に1ミリも驚かない日本人

まずはこちらの画像をご覧ください。(Credit:Blue Origin)

こんな景色見たことない、という人は1人もいないのではないでしょうか。そう、画像をご覧になった誰もが「ガン○ムのワンシーンでしょ」と思われたのではないでしょうか?
ですがこの画像、アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが立ち上げたBlue Originという宇宙ベンチャーの本気の未来予想図なのです。

著名なデザイナーの佐藤可士和氏は自作のロゴについて「誰でもできる」と批判された際、それは相手の頭に構造が一発で理解できるように作れた証拠で、自分にとっては誉め言葉であるという旨の発言をされていますが。まさにこのケースではベゾス氏の頭の中と一般的な日本人の基礎教養が同じ高みにあると言えます。

例えばベゾス氏がコロニー内の住宅地を考えたいと言ったとき、「ぐるっと廻って頭の上に他人の家があると気持ち悪いから対策した方がいいのでは」「無重力状態の長い通路は壁面にレバー上のベルトコンベアを設置するといい」といった考えが自然と頭に浮かびディスカッションできるのが、何十年も当たり前のように宇宙を舞台として(しかもその描写もカイゼンの対象としてブラッシュアップされ続けている)、我々日本人ではないでしょうか。

日本人だけが未来から来たような世界観を当たり前に共有している、という文化的土壌に立って、その未来世界に活かせる自社技術をディスカッションするなかで革新的イノベーションの創造に王手が掛けれられる。どうです?テーマにしたくなってきませんか?

参考リンク

JAXA・宇宙探査イノベーションハブ
https://www.ihub-tansa.jaxa.jp/

JAXAほか・スペースフードスフィア
https://spacefoodsphere.jp/

東京理科大学・スペースシステム創造研究センター(旧スペース・コロニー研究センター)
https://www.tus.ac.jp/ssi/