株式会社サイエンス・クリエイトが運営する創業支援施設Startup Garage(スタートアップガレージ)でコミュニティマネージャーと、宙(そら)サポの担当をしている勝間です。
「うちの会社と宇宙ってどうやって接点を考えたらいいの?」という声に応える連載、 “宙スタ”シリーズです。
三遠南信の夏の風物詩、花火。
コロナ禍で祭の中止や縮小が相次ぎ、騒がしいほど打ちあがっていたあの煌きと賑わいを懐かしく想う人も多いのではないでしょうか?
豊橋に限って言えば、手筒花火を揚げたくてウズウズしている人も多々いらっしゃることでしょう。
花火のカラフルな色味がそれぞれ金属が燃えている色であることはご存知かと思います。例えば赤はストロンチウム、青は銅、黄色はナトリウムなどです。
そしてそれらを燃やしているのが一番大事な花火の材料、今回はテーマである「黒色火薬」です。
現代では工業製品として大きな化学系の会社で作られているイメージがある火薬ですが、鉄砲が伝来した大昔にはなんとトイレから採取された材料で作られていました。
黒色火薬の主成分となるのは硝酸カリウム、硫黄、木炭です。
宇宙で花火をつくるには?
硝酸カリウムは尿の分解物から得られ、戦国時代には藁などに尿を掛けて発酵させてつくったり、析出したものをトイレの床から掘って利用していました。
世界遺産として岐阜の白川郷とともに有名な富山の五箇山は、かつては塩硝の産地。塩硝は硝酸カリウムが主成分で、硝石が手に入らなかった戦国時代の日本において火薬をつくるための材料でした。囲炉裏のある部屋の床で塩と偽りながら数年かけて生産していたそうです。
また硫黄はタンパク質の中に含まれており、こちらも人間の排泄物をリサイクルする形で得られます。木炭は前述のような植物工場が月にできるようになれば容易に手に入れられるようになるでしょう。
こう考えると、「月で手筒花火をつくる」のも夢ではないと思えてきませんか?
経年劣化しづらく、濡れると引火しづらくなり、乾くとまた可燃性を取り戻す性質も宇宙で安全に扱うポイントになりそうです。
月では貴重な水資源から作られ、生成から保管といった供給系にエネルギーコストの掛かる水素=酸素系のロケットではなく、黒色火薬を用いた打ち上げ花火のような古式ゆかしいロケットが小舟となって、月と地球を往復する宇宙船まで皆さんを運んでくれるようになったら面白いですね。
その時、火薬燃料を作っているのは花火職人さんの末裔かもしれません。
このようにEdTech(エドテック、EducationとTechnologyを組み合わせた造語)ならぬ “江戸” テック(江戸時代までの地産地消をベースとしたあるもので作る暮らし)に宇宙暮らしのヒントが隠れているかもしれません。
次回以降もこうした観点で宇宙ビジネスと地域の特色ある産業のコラボレートした未来を考えていきたいと思います。お楽しみに!