この記事は2017年1月7日に公開した記事を基に追記・修正致しました。
こんにちは、霞が関にやってきたちゃんらいです。
今日は豊橋を愛し、街づくりの裏方として活躍されている方にスポットライトを当ててみたいと思います。
目次
霞が関で働く豊橋市職員
東京にある行政の中心地、霞が関に足を運んでみた。数々の省庁が立ち並ぶ中、私は経済産業省に向かうと、長身で爽やかな好青年が私を迎えてくれた。
元 経済産業省
地域経済産業グループ 地域産業基盤整備課
2017年4月より、豊橋市役所 農業企画課に勤務
趣味:Googleに載っていないコト・モノを見つけること
岡崎生まれ豊橋育ち
豊橋市役所で働く吉開さんは、2017年3月まで経済産業省に出向し、霞が関で働いていた若者である。
1988年岡崎市生まれ。愛知大学に進学すると同時に豊橋で学生生活を過ごした。2011年に豊橋市役所に入庁後、2015年から経済産業省に出向し、2年間の出向期間を終えて、豊橋市役所に戻り、現在に至る。
この街のために
「豊橋はどっぷりつかると良いところがいっぱいある」と教えてくれる吉開さんは、根っからの豊橋大好き人だ。生まれた地は異なるものの、ここ豊橋の地が好きになった秘密に迫りたい。インタビューから見えてくるのは、吉開さんにとって第二の地元とも言える豊橋を心の底から愛しているからこそ出てくる言葉であった。
「この街のために何かしたい」と吉開さんの心を揺り動かす豊橋の魅力を語ってくれた。
地理や旅行が好きな吉開さん。訪れる先にしかない地域それぞれの特色に興味を持ち、様々な地へ大学時代から足を運んでいた。
長い歴史をもち、その地域独特の景色に惹かれる一方で、旅先でグローバルチェーンのひしめく光景を目にした吉開さんは、日本と世界で変わり映えしない景色に寂しさを感じたそうだ。
そのような景色を見てきた経験から、地方は地方ならではの風景を残していきたいという考えが彼の頭をよぎる。単に残せば良いという考えではなく、きちんと自給的に稼ぐ仕組みを作り、その上で残すべき伝統を残していきたいというのが吉開さんの想いである。
民間就職から公務員へ
もともとは、民間企業への就職を考えており、実際に内定も頂いていたが、「良い意味でいない人」として面白いことが出来るのではないかという想いをもって公務員を志す。
公務員として地域特有の素晴らしい景色や伝統工芸や伝統文化、地方にしかない独自の産業を残す社会的なシステムを創り上げることが出来るのではないかという期待を胸に、選んだ道が豊橋市役所での勤務である。
社会的なシステム
「社会的なシステム」とは、資本主義の社会の中で、持続的に伝統工芸や地域の文化や産業等を残すシステムの事を指している。
全国に200以上ある伝統工芸。後継者不足や、より効率的な機械生産の優位性など、おかれている状況や課題は共通している。しかし、そこを敢えて手作業で行う伝統工芸には独自の良さがあり、世代を超えて引き継がれるべきものであるというのが吉開さんの考えである。
That is so Japan 豊橋筆
そんな吉開さんの想いは、豊橋を代表する伝統工芸である豊橋筆に向いている。
豊橋筆は、筆市場で高いシェアを誇り、中でも高級筆のカテゴリにおいては7割近いシェアを誇る伝統工芸品の一つである。にも関わらず、職人さんに残る利益の少なさから後継者不足に悩む現状を目の当たりにする。また、これだけの潜在能力を抱えながらも光の当たりにくい道を歩んできた豊橋筆に対しては、PR不足を感じている。
一方で、高い技術による生み出される工芸品は適切なマーケティング活動によって消費者へ価値が届くと吉開さんは考える。
確かな筆作りの技術を持った職人と、消費者に対して価値を伝えるマーケティングの手法、この二つをつなぐハブとしての役目を果たしたいのだと吉開さんは私に語ってくれた。
豊橋筆との出会い
彼と豊橋筆の出会いは約3年前、2年間経済産業省へと出向が決まる頃である。豊橋市を背負って東京へ行く以上、豊橋の良さをしっかりと学んでから行きたいと考えていた。
豊橋での様々な活動を通じ、豊橋の事は地元の人以上に熟知していたものの、なかなかアプローチ出来なかったのが豊橋筆であり、東京に行く前に改めて豊橋筆のことを学びたいと考えていた。
Fukufude Projectのはじまり
そんな吉開さんの想いは、Fukufude Projectのきっかけとなる伝統工芸士の川合 福男さんとの出会いを引き寄せる。
2年前、川合さんの工房を訪れた。当時の吉開さんは、豊橋筆の名前は知っていたものの、豊橋筆の詳しいことは知らなかったと振り返る。川合さんから伺う話に衝撃を受け、面白さを感じるようになる。
豊橋筆の生産シェアは、高級筆というカテゴリの中で高い割合を持っている。しかし、その大半がOEM(製造受託)による供給という形で、世の中に「豊橋筆」という名前で出回ることが少ない仕組みで流通されているのである。このような流通構造の中で、職人さんの手許へ届く工賃が、果たして持続的な水準であるかどうかについても疑問に感じたそうだ。
高級筆というカテゴリに存在するためには、当然手間暇やかけるべきコストを惜しむことは出来ない。
一方で、筆業界の屋台骨である書道そのものの市場規模の縮小に歯止めがかからないのが現状であり、売上単価は天井が見えてしまっている。利益を残すためのコストの削減や収益の拡大に制限が課せられている中、何とか打開策を講じたいという吉開さんの想いは募る。
そういった布石を作るため、豊橋筆の技術を用いたプロダクト製作「Fukufude project」を立ち上げる。
守りたい伝統
彼が守りたい豊橋の伝統を心の底から楽しそうに語ってくれた笑顔がまぶしかった。
豊橋筆にかける想いを聞くにつれ、私に筆の魅力と吉開さんの思いが伝わってくる。
いや、きっと職人さんたちが魅力を語る姿もこのように光り輝いていたのではないだろうか。
そして、彼と職人さんたちの光は豊橋筆にあらたな光を照らしてくれるのではないだろうか。その姿は、Fukufude Progectの中で説明したいと思う。
プロジェクト始動
インタビューから4ヶ月。2年間の出向期間を終え、4月に吉開さんは豊橋市役所へと戻ってきた。経済産業省での経験は、吉開さんをより大きくしたに違いない。そして、あのプロジェクトは動き出したのである。
小さなお子様連れの家族で賑わう、休日のこども未来館ここにこ。吉開さんと、豊橋筆を作る伝統工芸士の川合さん。そして、二人の挑戦を助ける仲間が新聞記者の持つカメラの前に笑顔で並んでいる。
Fukufudeの製作過程を紹介する展示スペースが、ここにこの一角に用意された。Fukufudeがどのような想いで作られ、その制作過程にはどんな試行錯誤があったのか。豊橋筆にかける職人さん達の「想い」が展示されているのである。
Fukufude Projectはついにクラウドファンディングへのチャレンジを開始した。
子供を洗う世界一やさしい筆「Fukufude」の誕生である。
高い技術を持った職人の手によって、毛先が細くしなやかな毛を選別する。こうして選ばれた最高の穂先は、最高の肌触りを生み出すお子様用の洗浄ブラシ「Fukufude」となり、商品化に向けての第一歩を踏み出す。伝統的な技術が、親子浴という新しい価値を生み出そうとしている。
5月8日に公開したFukufude Project。現時点での達成率は以下の通りである。
挑戦開始からわずか2週間程で、目標とする金額を遙かに上回る応募が集まっている。子供を洗う世界一優しい筆「Fukufude」に魅力を感じた沢山の方々がこのプロジェクトを応援してくれているのである。
Fukufude Projectの先にあるもの
「未来に残したい、今がある」
そんな想いで始まったこのプロジェクトをきっかけに、より多くの人々に豊橋の伝統工芸である「豊橋筆」の魅力が伝わりますように。
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