扶養内で働くか、扶養から出て働くかはまだまだ働く女性のなかでも大きなテーマ。
しかし、2022年10月からの法改正適用で社会保険の扶養の範囲からはみ出してしまう方が多数おいでになることと思います。
今回はこの法改正で何が変わるのかをご説明するとともに、「扶養」の仕組みについてご説明します。
目次
1)社会保険の適用拡大で何が変わる?
今まで、パート・アルバイトとして週30時間未満で働いている方は社会保険の加入義務はありませんでした。2020年からは従業員数501名以上で一定条件に該当するパート・アルバイトの方は社会保険の適用を受けるようになりましたが、この規模の企業でパート・アルバイトで働く方の割合はさほど多くなかったのではないかと思料します。
しかし、2022年10月から、従業員数101名以上の企業において一定要件に該当するパート・アルバイトの方は社会保険の適用を受けることになりました。
その要件とは下記のとおりです。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2か月以上雇用される見込みがある
- 学生ではない
従業員数101名以上の会社で働くパート・アルバイトの方でもこちらの条件に該当されれば社会保険に自分で加入することになり、給与から保険料が天引きされることになります。
2)社会保険の適用拡大により、扶養の壁は3段階に
この適用拡大により、従来より言われていた社会保険の「扶養の壁」は「年収103万円の壁」「年収106万円の壁」「年収130万円の壁」の3段階になることになりました。
ここからはそれぞれの条件を具体的に見ていきます。
・扶養の壁その1「年収103万円の壁」=所得税非課税の範囲内で働く
この一つ目の壁は、自分自身の所得税を非課税にするという範囲を指します。
給与の支給を受けるときに所得税は一度天引きされるのですが、年間103万円以内の給与収入しかない場合は年末調整か確定申告でその所得税を戻してもらえるのです。
・扶養の壁その2「年収106万円の壁」=扶養の範囲内で働く(ただし自分の勤め先は従業員101人以上)
この2つ目の壁は、今回の社会保険適用拡大で発生したものです。
(1)で紹介した条件に該当している方が対象になります。
この方々はいままで配偶者の被扶養者ということで、健康保険証は配偶者の名前で加入していたものと思います。また、国民年金についても3号被保険者になるため保険料を支払う必要がありませんでした。
しかし、(1)で紹介した条件に該当するパート・アルバイトの方はこの106万の壁(8.8万円×12月)を超えると、ご自分で社会保険料を支払うことになります。仮に月の給与額9万円の方が適用拡大の対象になると、社会保険料は年額で約15万円(※)となります。
・扶養の壁その3「年収130万円の壁」=扶養の範囲内で働く(ただし自分の勤め先は従業員101人未満)
この3つ目の壁は、従来の条件と同じです。
つまり、自分は従業員規模の小さな企業で働いており、配偶者の被扶養配偶者として健康保険に加入、国民年金は3号被保険者に該当する範囲内で働くことになります。
・扶養の壁を超える=年収130万円以上を稼ぐ働き方をする
扶養の壁を超え、ご自身で社会保険料を納めるという働き方です。
ここで問題になるのはいわゆる「働き損」の問題です。額面では扶養の壁内の方より多くても、社会保険料を支払うことによって実際の手取り額が少なくなるという逆転現象が発生します。これを防ぎたいのであれば、自分自身の給与額をおおむね年間151万(月額13万)円以上にできるかどうかを目安にされることをお勧めします。
(わかりやすくするために、手取り額から控除されるものを社会保険料だけとして計算しています。実際は雇用保険料・所得税も控除対象になりますのでご注意ください。)
- A)年収128万円の扶養範囲内の方の手取り額⇒ 128万円
- B)年収130万円の扶養範囲外の方の手取り額⇒ 130万ー社会保険約19万=111万円
- C)年収150万円の扶養範囲外の方の手取り額⇒ 151万ー社会保険料23万=128万円
このシュミレーションから、実際の手取り額が増えていくのは年収151万円以上からということがご理解いただけると思います。
※愛知県の令和4年7月現在の社会保険料をもとに40歳未満として計算
3)壁を超えるメリットとデメリットを理解して自分らしく働こう
もちろん、扶養の範囲を超えて働くことのメリットは複数あります。
こちらは別の機会に詳述したいと思いますが、例えば健康保険の傷病手当金、出産手当金などの給付を受けることができたり、厚生年金の障害厚生年金の支給対象になるなどのほか、自身のキャリア構築がスムーズになるなどの効果もあります。
ご家庭の事情などでフルタイム就業が難しい方は「働き損」にならないよう、こうした知識を持ってご自分や配偶者の方と意識を合わせながら賢く働くことをお勧めいたします。